県教育長への申し入れ2014年09月04日

今日は午前、県立高校の教科書採択問題で、日本共産党千葉県委員会と県議団とで教育長への申し入れを行いました。

 この間、県議会では自民党議員が、県立高校で現在使われている教科書、実教出版の「高校日本史」を取り上げ、その内容について執拗な批判、いや攻撃を繰り返すという議会質問が行われてきました。その経過の中で、昨年11月に教育長名で、学校長宛に、これも実教出版と教科書を特定し、ページ数まで記載した上で、「生徒に混乱が生じないように丁寧に指導すること」と明記した、異例とも言える通知を出しました。その後、今年に入ってから、学校長会議などで、この内容を繰り返し徹底してきたと聞いています。

 そして84日に今度は、教育庁の指導課名で、来年度、実教出版の日本史教科書を選定した学校長宛に、これまた異例とも言える連絡文書を出しているのです。そこでは、「国旗・国歌について」「太平洋戦争における各国の犠牲者数」「南京大虐殺の犠牲者数」について、この教科書を選定した説明が不十分だから、再度、説明資料を作成し提出せよ、それを踏まえてヒヤリングを行うというものです。さらに、「提出資料の内容が十分でない場合は」としたうえで、8月中にヒヤリングを実施する場合もあると書き添えられています。これでは説明資料は、教育庁の意に沿わないものは通りませんよと言っているのと同じでしょう。これは学校長への恫喝であり、学校への圧力以外の何ものでもありません。

 教育長は、「教科書採択は公正公平に行う、引き続き採択されるようすすめていく」「子どもたちに誤解がないよう、正しく理解してもらうために」など、一般論を述べ「お約束ですから」と10分たったら自ら席を立って退出してしまいました。事の重大さと、申し入れの趣旨が教育長はわかっているのだろうか。

 戦後、高校の教科書は、現場の学校が選んで、それが使われてきました。今度、ことさら問題にされている教科書も、きちんと国の教科書検定をクリアしたものです。それを県議会と一体となって、教育庁が圧力をかけて介入する、この背景には何があるのだろうか。

私はやっぱりこの根底には、あの戦争は「正義の戦争」だったとする、いわゆる「靖国史観」が大きく横たわり、戦争できる国づくり、軍国主義復活の流れと一体のものだと思います。見過ごすことのできないきわめて重大な問題です。一方で今、集団的自衛権行使容認に抗する、国民の良識ある動きが急速に広がってきています。教育への不当な介入、支配を許さないたたかいを県民のみなさんと大きく展開していくために力をつくしていこう。

 

以下が申し入れ文書です


県教育庁による特定教科書の排除に抗議し、その中止を求める申し入れ

 

千葉県教育長 瀧本 寛 様

2014年9月4日 日本共産党千葉県委員会

日本共産党千葉県議会議員団

 

一、千葉県教育庁指導課は8月4日、2015年度使用教科書について、実教出版の「高校日本史教科書」を選定した県立高等学校の校長に対して、「選定理由の追加提出について」なる「事務連絡」文書を発出した。同文書は、各校長があらかじめ県教育長に提出していた当該教科書の選定理由書について、「採択のための説明が不十分」などとして理由書の出し直しを指示したものであり、昨年11月20日の「平成26年度使用高等学校用教科書の採択結果について(通知)」を踏まえた資料の提出を求め、さらには「ヒヤリング」を実施することまで通告するという、驚くべき強圧的な内容となっている。

わが党は、このような県教育長による特定の教科書の排除を目的とした学校現場への「圧力・介入」に断固抗議し、同文書の撤回と特定の教科書排除を中止するよう強く求める。

 

一、昨年11月の「通知」は、当該教科書が国旗及び国歌について「一部自治体で公務員への強制の動きがある」と注釈で述べていることや「太平洋戦争における各国の犠牲者数」「南京大虐殺の犠牲者数」の記述について、まるで問題があるかのように扱っている。

この間、改憲を主張する「日本会議地方議員連盟」所属の自民党県議が県議会本会議で当該教科書を名指しした攻撃を繰り返しており、昨年11月および今年8月の「通知」は、これに呼応した教科書選定への政治介入以外の何ものでもない。

 

一、今回の高校日本史教科書選定をめぐる県教育長のやり方は、学校現場に不安と混乱をもたらし、かつ教育の自主性を奪うものであり、断じて許されるものではない。

 これまで県立高校で使う教科書は、それぞれの学校が選定した教科書がそのまま認められており、実態として学校現場の判断が尊重されてきた。学習指導要領でも「教育課程の編成は学校が行う」としており、実際に授業を行う教員が自らその教科書を選ぶのは当然のことである。

 ところが県教育長は、昨年来、当該教科書使用時の「留意事項」なるものを示し、学校に事実上の「圧力」をかけてきた。その後、一部の高校では、当該教科書の使用を避ける動きも生まれている。

 県教育長が今回おこなった措置は、当該教科書を選定した学校に対して、さらに「圧力」を強めたものである。しかし当該教科書は、いわゆる「教科書検定」をクリアし、文科省も使用を認めているものである。その教科書が気に入らないからと、あれこれと圧力をかけ、使用断念に追い込むようなやり方は、まさに「二重検定」に等しく、教育基本法が禁じている「不当な支配」そのものと断じざるを得ない。到底容認することはできない。

 

一、こんにち、侵略戦争を美化し、憲法「改正」を企てる安倍政権のもとで「戦争する国」づくりの危険な動きが強まり、県議会においても知事は「集団的自衛権行使」を事実上容認する姿勢を示している。今回の高校日本史教科書採択をめぐる異常事態の背景には、このような、わが国の憲法をふみにじり、軍国主義の復活をめざす野望があると言わなければならない。

 

一、戦後、日本国民は、政治や行政による不当な介入から教育の自主性を守り、戦前のような画一化された「国定教科書」の復活を許さないたたかいを進めてきた。教科書は、国民的討論を通じて真理・真実に即しかつ魅力あるものとなり、その採択にあたっても、現場の教員や保護者らの意向が十分に反映することが求められている。

 貴職が、この基本的立場に立って教科書採択にあたるよう重ねて申し入れるものである。

以上



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